UNTITLED CMYKRGB TEXT 001

はじめこの作品は、ヤスケ(注1)というWEBマガジンで発表をするために作った作品でした。WEBマガジン上で何をするか、何ができるのかというところから考えはじめました。そして長く続けることがひとつの目標です。

いろいろなこだわりを取り、描きはじめたいと思いました。手を動かし、そして見て、手を動かし、そして少し考え、それを繰り返して続けていこうと考えました。それがテーマなのかもしれません。だから、UNTITLEDとしました。手を動かし始めると、さまざまなことに捕われていると、自分が描いた線を見たときに感じてしまいます。この線はここから描き始められ、ある終点に向かって描き進められていくという、方向性と意図が感じられて、それがなにかに捕われていて、捕われているだけならばいいのですが、それが自由ではなく、窮屈な、閉じた、おもしろくないイメージに感じられたのです。

印刷技術は近年では、CMYKというシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの色をそれぞれの割合で刷り重ねる方法が主流でした。アートや絵や写真やイラスレーションやグラフィックスが、マスプロダクツ、マスメディアの中で流通させるために、その4色の印刷方法で印刷されました。(その印刷行程は、そこを通過することで、すべてがある一直線上に並ばされるような、そんな感覚を持たされるような気がしました。)しかし最近では、印刷メディアがRGBモニター、液晶、携帯電話、とさまざまな形に取って代わられていき、印刷メディアの減少が著しいという現実があります。そんな中でRGBデータをモニターの見た目により近づける印刷方法が使われ始めています。

私は絵を描くというところから始めて、描き進める中でイラストレーションというものに衝突するように出会いました。または、ごく普通に雑誌メディアを主にイラストレーションと出会ってきたのかもしれません。いづれにせよ、イラストレーションという仕事をいくらかしてきました。そして今までの私の仕事上では、最終的にCMYKという形になるということだけを想定していればよかったのです。けれど現在では、パーソナルコンピューターを使うことでRGBで作りRGBで流通していくという表現形式も普通になりました。どんな作り方をするにせよ、以前よりもそのアウトプット表現は広がったことにちがいありません。またメディアの総体は減少したにもかかわらず、表現の方法は逆に広がったという状況なのかもしれません。

CMYKという印刷方法に関わりたくないと思うこともあります。かといってRGBでつくりRGBでアウトプットするだけでは満足がいかない気もします。それならCMYKRGBの印刷方式でのアウトプットでうまくいくかというと、そうでもない気がするのです。しかしWEBマガジンという形式はどうやっても、はじめはRGBデータ形式でお見せする表現形式なのです。

あらゆる表現形式にいずれは変換される、または出力されるであろうことを、頭の遥か彼方の片隅に置いてWEBマガジンで何かしようと考えました。手書きの線や面がいずれあらゆる形に変換されるということだけでなく、その描くという表現方法自体も変化、変換させていくということを頭の遥か彼方片隅に置いています。

イラストレーションは描きたくないということでなく、絵を描きたいと思っています。CMYKRGBはそんな、どこか微妙なアンビバレントな思いを受け入れたり、突き放したり。あらゆる関わりを肯定して否定するためにつけたサブタイトル、添字、ごく短い詩、ごく短い文章、タイトルのように添えられる、掲げられるけれど、そうであって、そうでないものとして、頭の遥か彼方片隅に置くように付けたものです。

注1・ヤスケ http://www.yasuke.net/index.html

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